
「it」と「that」を日本語に訳すと「それ」と「あれ」。まずはこんな感じで意味を覚えた方も多いのではないでしょうか。
もちろん、直訳では間違ってはいないのですが、意味や使い方はそれだけではありません。
今回は「it」と「that」の違いや、この2つの単語の使い方などを説明します。
「it」と「that」のニュアンスの違い
「it」は何か具体的な対象物を指し示す場合に使われることが多いです。
「that」は目に見えない何か抽象的なものを指す場合に使われることが多いです。
以下の例文で見てみると
That’s very kind of you.
(あなたはとても親切ですね)
「It’s very kind of you.」とはなりません。
ここでは親切という気持ちの抽象的なものに対しての表現になりますので、「that」が適用されます。
「it」と「that」の範囲の違い
「it」の方が範囲は狭くて「that」の方が範囲は広いという違いがあります。
以下の会話例文で見てみると
Mike:I bought a new house.
(私は新しい家を買いました)
(1) Tom:It’s really nice.
(2) Tom:That’s really nice.
「it」「that」のどちらでも間違いではありません。ニュアンスの違いです。
まず「It’s…」の文が持つニュアンス的な意味は、新しい家が「nice」と言っています。「it」は家そのものに対して「nice」と言っています。
「that」になると、家を買った行為全体に対して「nice」と言っています。
「it」と「that」は、ニュアンス的な違いと範囲の違いと言ったポイントをまず抑えておくだけでも、ネイティブ的な発想で使い分けることができるでしょう。
「it」と「one」の違い
「it」と「one」の違いについても説明します。
「one」と聞くと「1」とか「ある」といった意味合いを感じますよね。
英語学習と言う観点ではあまり注目されにくい単語ですが、実はこの「one」も使い方次第ではあなたの英語表現を豊かにしてくれる単語なのです。
例文を見てみましょう。
Mike:Do you know where my bicycle is?
(私の自転車がどこにあるか知らないですか?)
なんでしょう?停めた場所にあるはずの自転車がない!ちょっと焦りを感じる文章ですが、この場合の返答として想像できるのは、「どっかで見たけど…」みたいな曖昧な表現で答える場合と、「それなら、見たよ!」と言った明確な返答を得られる場合が考えられます。
(1) Tom:Yes I do. I saw it in the store’s parking.
(見たよ。その店の駐輪場にあるよ)
(2) Tom:No I don’t, but I might see one in the store’s parking.
(ごめん。でも、その店の駐車場で見たかもしれないな…)
「はっきり見たよ!」という場合には「it」を、なんだかぼんやりとみたいな感じの時は「one」を使うのがネイティブの感覚に近いです。
ここでも、「it」は何かをはっきりと指し示すと言う感覚で使われているのには変わりありません。
もうひとつだけ例文を挙げてさらにはっきりさせていきましょう。
Ⅰhave lost my umbrella. I have to buy a new one.
(傘を無くしちゃった。新しいのを買わなきゃ)
この場合にも「one」が使われているのが実はこの例文の大きなポイント。
とりあえず、なんでも良いから傘を買わなきゃみたいな感覚で使われています。コンビニのビニール傘でも、ちょっとお高い傘でも。とにかく傘ならなんでもという感覚です。
これを「one」から「it」に置き換えるも文法的には間違えではありません。ですが、ニュアンスはだいぶ違います。「無くしたものと同じ傘を買わなきゃ!」みたいな感覚になります。この場合に想像できるのは、借りた傘を無くしたみたいな状況。大事な傘を無くして困ったみたいな感覚になります。ここでも「it」は限定的な意味で使われています。
ここまで「one」にも触れてきましたが、いかがでしょうか?「one」にはどこかおぼろげな雰囲気が漂い、「it」にはどうしても限定的な要素を含んでいるという違いがあります。
固有名詞の代用に使える「one」
「one」は文中で繰り返し現れる固有名詞に対しての代用をさせることができます。
今回例文で取り上げている「umbrella」がどうしても文中で繰り返し使用しないといけない場合などは「one」を使って代用することができます。
この用法の使い方で注意しなければいけないのは、特定の要素を満たさないと言うことだけ。「とにかくどんな傘でも必要なんです!」のときは「one」を使えます。
おわりに
「it」と「that」の違いに加えて「one」についても説明しました。
中学の初期段階から登場するこれらの代名詞的な単語は使い方次第で、英語そのものをスマートにしてくれます。